借金の相談はなるべく早く【ライズ綜合法律事務所・久松 亮一】
弁護士として借金に関するご相談を受けていると、もう少し早い段階でお話を聞けていたら、と思うことがあります。
もちろん、相談が遅かったからいけないという意味ではありません。借金のことは家族や友人にも話しにくいものですし、自分で何とか返していきたいと考えるのも自然なことです。
最初は問題なく返済できていた方でも、収入が減ったり、急な出費が重なったりして、少しずつ返済が苦しくなることがあります。それでも毎月の支払日が来れば、何とかお金を用意する。足りなければ別のところから借りる。そうしているうちに、自分でも全体の借入額がよく分からなくなってしまうケースがあります。
こうなると、生活の中心が返済になってしまいます。
私は、そこまで追い込まれる前に一度相談していただいて構わないと思っています。
弁護士への借金相談は、返済できなくなった人だけが利用するものではありません。今は払えているけれど、この状態を続けられるか不安だという段階でも、今後を考える意味は十分にあります。
毎月払えていることと、問題なく返せていることは違います
借金について考えるとき、私は毎月の返済ができているかどうかだけで判断しないほうがいいと考えています。
たとえば、返済日になるたびに給料の大部分がなくなり、その後の生活費をクレジットカードで補っている状態ではどうでしょうか。
形式的には返済できています。しかし、生活全体で見れば、新たな負担を増やしながら以前の借金を返していることになります。
また、一社への返済資金を別の会社から借りて用意している場合も注意が必要です。
こうした状態が続くと、毎月きちんと支払っているつもりでも、借金そのものはなかなか減りません。返済のために新しい借入れが必要になるのであれば、家計全体を見直す必要があると考えたほうがよいでしょう。
借金の問題は、今日払えるかどうかだけではなく、半年後や一年後にも同じ返済を続けられるかという視点で考えることが大切です。
借金を整理する方法は一つではありません
借金問題の相談というと、すぐに自己破産を思い浮かべる方もいらっしゃいます。
そのため、まだ自己破産まではしたくないから弁護士には相談しない、という方もいます。
しかし、借金を整理する方法は自己破産だけではありません。
債権者との間で今後の返済方法を調整する任意整理という方法もありますし、裁判所の手続きを利用して借金を大幅に減額し、原則として一定期間で返済していく個人再生という制度もあります。そして、返済を続けることが難しい場合には、自己破産を検討することになります。
どの方法が適しているかは、人によって違います。
借入額が同じでも、収入や毎月の生活費、家族の状況、住宅ローンの有無などが違えば、考えられる方法も変わります。
そのため私は、最初から特定の手続きに当てはめるのではなく、まず現在の状況を整理することが重要だと考えています。
相談が早ければ、検討できることも増えます
借金問題では、時間が経つことで状況が変化することがあります。
返済が苦しくなっても無理を続け、さらに借入れを重ねれば、当然ながら負担は大きくなります。支払いが滞れば、債権者から督促を受けることもあります。
場合によっては、裁判所から書類が届くこともあります。
そうなって初めて、もう自分だけでは対応できないと相談に来られる方もいます。
もちろん、その段階からでも対応を検討することはできます。しかし、状況が進む前であれば、収支を見直したうえで返済を続けられるのか、債務整理をしたほうがよいのかを、より落ち着いて検討しやすくなります。
私が早めの相談をおすすめする理由は、単純に早く手続きを始めたいからではありません。
まだ何をするか決めていない段階だからこそ、状況を整理し、選択肢を比較する時間を持てるからです。
家族に知られたくないという相談もあります
借金について相談することをためらう理由として、家族に知られたくないという話を聞くこともあります。
配偶者には借金のことを話していない。親に心配をかけたくない。職場には絶対に知られたくない。
そうした事情があると、誰かに相談すること自体が怖くなるかもしれません。
ただ、借金を隠すために新しい借入れを重ねてしまうと、結果として問題が大きくなることがあります。
債務整理を行った場合に家族や勤務先との関係でどのような影響が考えられるかは、選択する手続きや個々の状況によって異なります。
だからこそ、家族に知られたくないという事情も含めて相談していただきたいと思います。
弁護士に相談するときに、きれいに事情を説明する必要はありません。
借金が何社あるのか正確に覚えていない、毎月いくら返しているか分からなくなったという状態でも、分かるところから整理していけばよいのです。
弁護士に相談したからといって、すぐ手続きをする必要はありません
私は、法律相談には現在地を確認するという役割もあると思っています。
借金について相談した結果、すぐに債務整理を検討したほうがよい場合もあれば、収支を確認しながら今後の対応を考えられる場合もあります。
大切なのは、自分の状況を知らないまま無理を続けないことです。
返済について考えるだけで気持ちが重くなるようになった。給料日が来ても、すぐ返済でほとんどなくなってしまう。カードの利用や新しい借入れがないと生活費が足りない。
そうした変化は、借金について一度きちんと考えるきっかけになります。
借金の問題は、我慢できるところまで我慢した人から相談するものではありません。
まだ何とか払えている。
でも、このままで大丈夫なのだろうか。
その段階で相談していただいてもいいのです。
弁護士に話したからといって、必ず何らかの手続きをしなければならないわけではありません。現在の借入れと生活の状況を整理して、これからどうするのがよいのかを考える。それだけでも相談する意味はあります。
借金について一人で考え続けていると、どうしても次の支払日のことばかりに目が向いてしまいます。
そんなときこそ、少し先まで視野を広げてみてください。
私は、目の前の一回をどう返すかだけではなく、その先の生活をどう立て直していくかまで一緒に考えることが、借金問題に向き合う弁護士の役割だと考えています。



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