「訴えてやる!」って、実際どういう状態なの?法的トラブルを防ぐためにできること

弁護士法人ライズ綜合法律事務所の東京本店事務所で社員弁護士を務める、久松亮一です。

ドラマやニュースの中で、訴えてやる、という言葉を耳にすることがあります。とても強い響きのある言葉で、なんだか一気に大ごとになりそうな印象を受けます。ただ、実際に訴えるとは何をすることなのか、その後どうなっていくのかを、正確に思い浮かべられる人は意外と少ないのではないでしょうか。今回は、この誰もが一度は口にしたり聞いたりしたことのある言葉について、その中身をゆるく整理してみます。

そもそも訴えるとは何をすることか

日常会話で使われる訴えるは、多くの場合、民事訴訟を起こすことを指しています。民事訴訟とは、お金を返してほしい、損害を賠償してほしい、といった当事者どうしの争いについて、裁判所に判断を求める手続きです。訴えたい側が、自分の言い分と求める内容を書いた書面を裁判所に提出することから始まります。

ここで少し補足しておくと、訴えるという言葉には、犯罪について警察や検察に処罰を求める意味合いで使われる場合もあります。ただ、日常で相手に対して訴えてやると言うときは、お金や損害をめぐる民事の話を指していることが多いといえます。どちらの意味なのかで、その後に進む道筋はまったく違うものになります。

いきなり裁判とはかぎらない

訴えると聞くと、すぐに法廷で対決する場面を想像するかもしれませんが、実際には、訴訟の前にとれる方法もいくつかあります。まずは当事者どうしで話し合ったり、書面でこちらの主張を伝えたりして、解決をはかることが少なくありません。

それでもまとまらない場合には、調停という方法もあります。調停は、裁判所の場を借りながらも、判決で白黒をつけるのではなく、間に入る人を交えて話し合いによる解決をめざす手続きです。訴訟に比べて、当事者どうしの歩み寄りを大切にする性質があります。訴えるという選択は、こうしたいくつかの道のうちの一つであり、最初から唯一の手段というわけではない、という点はおさえておきたいところです。

時間とお金の感覚

実際に訴訟を起こすとなると、時間とお金の感覚も知っておくと現実が見えやすくなります。争いの内容にもよりますが、通常の裁判は、始まってから結論が出るまでに数か月から、場合によっては一年以上かかることもあります。ドラマのように、その日のうちに劇的な結末を迎えるわけではありません。

また、裁判を起こす際には、裁判所に納める手数料などの費用がかかり、弁護士に依頼する場合にはその費用も必要になります。一方で、比較的少ない金額をめぐる争いについては、少額訴訟という簡単な制度も用意されています。これは、六十万円以下のお金の支払いを求める場合に使えるもので、原則として一回の期日で審理を終える、手軽さを重視した手続きです。争いの大きさに応じて、選べる道が用意されているわけです。

勝っても自動でお金が入るわけではない

もう一つ、意外と知られていないのが、裁判で勝ったからといって、その瞬間にお金が振り込まれるわけではない、という点です。判決で相手に支払いを命じる結論が出ても、相手が自分から支払わないことはあります。

その場合には、相手の財産を差し押さえるなどして、強制的に回収する手続きに進むことになります。ただ、これも相手にそもそも財産がなければ、思うように回収できないこともあります。つまり、訴えて勝つことと、実際に望んだ結果を手にすることは、必ずしも同じではないのです。訴えるかどうかを考えるときには、この先の回収まで見通しておくことが、現実的にはとても大切になります。

訴えるは道具の一つにすぎない

こうして中身を見ていくと、訴えてやるという言葉が、実はかなり幅のある、そして時間も労力もかかる営みを指していることが分かります。強い言葉である分、勢いで口にしてしまいがちですが、その実態は、感情をぶつける行為というより、決められた手続きに沿って冷静に権利を主張していく作業に近いものです。

だからこそ、訴えるという選択は、いくつもある解決の道具のうちの一つとしてとらえておくのがよいのだと思います。本当に訴訟という手段が合っているのか、その前にできることはないのか、勝った先にどんな道が続くのか。そうした全体像を落ち着いて眺められるようになると、訴えてやるという言葉の見え方も、きっと少し変わってくるはずです。

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