親が亡くなったあとの手続き、弁護士にどこまで頼める?【久松亮一の法律ブログ】

弁護士の久松亮一です。親が亡くなったあと、実家に残された通帳や書類を前に、何から確認すればよいのか戸惑うことがあります。家族で分担しようとしても、誰が銀行に連絡するのか、実家をどうするのか、そもそも何を決める必要があるのかが分からず、話が止まってしまうかもしれません。

相続で弁護士に頼めるのは、家族が争ってしまったあとの対応だけではありません。必要な情報を整理し、遺産の分け方を検討し、依頼者の代理人として話し合いを進めることも仕事に含まれます。

今回は、相続のどの部分を弁護士に任せられるのか、実際の場面を思い浮かべながら説明します。

書類がそろっていなくても、相談は始められます

相続の相談というと、財産の一覧や家族関係を自分で調べ、すべてまとめてから行くものだと思うかもしれません。しかし、何が足りないのかを確認するために相談することもできます。

例えば、手元にあるのが数冊の通帳と固定資産税の通知書だけでも、そこから確認すべきことを考えられます。通帳に載っている残高が現在のものなのか、不動産は誰の名義なのか、ほかに財産や借入れがないか。まずは分かっていることと、まだ分からないことを区別します。

弁護士は、遺言の有無や相続人の範囲なども確認しながら、その後の進め方を検討します。必要に応じて、依頼を受けた範囲で戸籍や財産に関する資料の収集を進めることもあります。ただし、依頼すればすべての財産が自動的に見つかるわけではありません。家族が知っている情報や、実家に残された書類も大切な手がかりになります。

相談前に完璧な一覧を作ろうとするより、気になっている書類を持参し、どこから調べるべきかを確認するほうが進めやすい場合もあります。

実家をどう分けるか、具体的な案を考えられます

預貯金と違い、家や土地は簡単に人数分へ分けられません。相続人の一人が住み続けたいと考えていても、ほかの人は売却して代金を分けたいと思っていることがあります。

こうした場合には、不動産の価値だけでなく、誰が利用するのか、維持費を負担できるのか、取得する人がほかの相続人にお金を支払えるのかなどを確認する必要があります。

弁護士に相談すると、それぞれの希望を踏まえ、検討できる分け方と課題を整理できます。実家を取得する人がほかの相続人に代償金を支払う方法や、売却して代金を分ける方法など、事情に応じて選択肢を比較していきます。

大切なのは、誰がどのくらい受け取るかに加えて、決めた内容を実際に実行できるかまで考えることです。住み続けたいという希望があっても、必要な支払いや今後の管理が難しければ、その点も含めて話し合う必要があります。

家族への連絡や交渉を任せることもできます

相続の話は、身近な家族だからこそ切り出しにくいことがあります。財産について質問しただけなのに、疑っているのかと受け取られたり、昔の出来事まで話題になったりする場合もあるでしょう。

弁護士は依頼者の代理人として、ほかの相続人への連絡や、遺産の分け方についての交渉を担うことができます。相手から提示された案を確認し、こちらの希望や、その根拠となる資料を整理して伝える役割です。

ここで知っておきたいのは、一人の相続人が依頼した弁護士は、その依頼者の立場で対応するということです。家族全員の希望を公平に採点する役割とは異なります。

自分では話がまとまらない、連絡のたびに負担を感じる、提示された条件をどう受け止めればよいか分からない。そうしたときには、交渉を任せる必要があるかも含めて相談できます。

合意の内容を書面にする段階でも役立ちます

家族の間で大まかな方向性が決まっても、それだけで相続の準備が終わるとは限りません。誰がどの財産を取得するのか、金銭の支払いがあるならいつ行うのかなど、具体的にしておくべき事項があります。

例えば、実家は長男が引き継ぎ、ほかの兄弟にはお金を支払うという話がまとまったとしても、金額や支払時期が曖昧なままでは、後から認識が食い違う可能性があります。

弁護士には、合意内容を確認し、遺産分割協議書の作成や、相手から示された書面の確認を依頼できます。署名を求められたものの内容がよく分からないときも、どのような権利や義務が生じるのかを確認してから判断できます。

口頭では納得していたつもりでも、書面にしてみると決まっていない部分に気づくことがあります。合意を形にする作業は、話し合いの抜けを確認する機会にもなります。

話し合いが進まない場合には、調停への対応もあります

相続人の間で遺産の分け方について合意できない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法があります。調停では、調停委員会が双方の事情や希望を聞き、資料も確認しながら合意を目指します。

弁護士には、申立ての準備や書面の作成、代理人としての対応を依頼できます。相手の主張に対して何を説明する必要があるのか、どの資料が裏付けになるのかを整理することも、その役割です。

調停を申し立てれば必ず希望どおりになるわけではありません。また、合意に至らなければ、原則として審判の手続に移ります。だからこそ、手続を始める前に、自分の希望と法的な見通しを確認しておくことが大切です。

依頼する範囲と費用は、最初に確認しましょう

相続には、税金の申告や不動産の名義変更など、複数の専門家が関わる作業があります。弁護士に相談する際も、どの仕事を引き受けてもらえるのか、税理士や司法書士への依頼が別途必要なのかを確認すると、全体の見通しを立てやすくなります。

相談だけを受けるのか、書面の確認を頼むのか、家族との交渉から任せるのかによって、依頼の範囲や費用は変わります。弁護士費用のほかに、資料の取得などにかかる実費も確認しておきましょう。

相続の手続きをすべて任せたい場合もあれば、家族で進めながら判断に迷う部分だけ助言を受けたい場合もあります。今どこで困っているのかを伝えることが、自分に合った頼み方を考える出発点になります。

親が残した財産を整理することは、残された家族の暮らしにも関わります。自分で進められる部分と、専門家の力が必要な部分を見極めながら、納得できる形へ一つずつ整えていきましょう。

コメントを送信

CAPTCHA


You May Have Missed