フリーランスの仕事、追加修正はどこまで?依頼を受ける前に確認したい契約のこと【久松亮一の法律ブログ】
制作物を納品したあとに、修正の依頼が何度も届く。当初は文章だけの仕事だったのに、画像の準備や入稿も頼まれる。フリーランスとして働いていると、このように、仕事を引き受けた時点では想定していなかった作業が増えることがあります。
取引を続けたい気持ちから対応していても、作業時間が膨らめば、ほかの案件や日々の生活に影響します。一方、依頼する側も、どこまでが報酬に含まれているのかを十分に理解していない場合があります。
追加修正をめぐる行き違いを防ぐには、仕事を始める前の合意が大切です。今回は、依頼範囲、修正回数、納品条件、追加報酬について、身近な制作業務を例に考えていきます。
依頼範囲は、完成するものと担当する作業を分けて考えます
例えば、ウェブサイトに掲載する記事を一本作成する依頼でも、実際の作業は案件によって異なります。渡された資料をもとに執筆するのか、取材や調査から担当するのかによって、必要な時間は変わります。写真の選定や管理画面への入稿まで含むなら、文章の制作以外にも作業が発生します。
そのため、記事一本という成果物の説明だけでなく、完成までに何を担当するかを確認することが重要です。文字数やテーマに加えて、資料を誰が用意するか、取材が必要か、画像を扱うか、掲載作業まで受け持つかを具体的にしておきます。
デザインの仕事であれば、完成画像の枚数だけでなく、提案する案の数やサイズ違いの制作についても確認したいところです。同じ画像を別の媒体で使うための調整が、当初の料金に含まれるとは限りません。
見積もりは、金額を伝えるだけのものではありません。その金額で何を引き受けるのかを、依頼者と共有する機会でもあります。
修正回数とあわせて、修正の内容も決めておきます
修正は二回までと決めていても、それだけで対応範囲が明確になるわけではありません。表現を数か所直す作業と、企画から変更して全文を書き直す作業では、負担が大きく違うからです。
例えば、商品紹介の記事を納品したあとに、採用向けの記事へ変更してほしいと依頼された場合、文字を直すだけでは対応できません。読者も目的も変わるため、構成を組み直す必要があります。このような変更を通常の修正に含めるかどうかは、受注前に確認しておくと安心です。
また、修正一回の数え方も共有しておきたい点です。依頼者が社内の意見をまとめて送る場合と、複数の担当者から別々に指示が届く場合では、やり取りの量が変わります。確認担当者を決め、修正の希望をまとめて伝えてもらう方法も考えられます。
ただし、制作者の誤りや、合意した仕様に合っていない部分への対応は、依頼者の都合による変更とは分けて考える必要があります。修正回数を超えたという理由だけで、すべてを有料にできるとは限りません。何を約束していたのか、なぜ修正が必要になったのかを確認することが先になります。
納品の方法と、確認が終わる時期を共有します
納品については、いつまでに提出するかに目が向きがちです。しかし、どの形式で、どこへ提出すればよいのかも大切です。
文章なら文書ファイルなのか、管理画面への入力なのか。デザインなら画像データだけなのか、編集可能な元データも必要なのか。ここが曖昧だと、提出後に別形式のデータを求められ、追加作業になることがあります。
さらに、提出したものを依頼者がいつ確認するかも決めておきます。確認の連絡が長期間来ないまま、突然修正を求められると、ほかの仕事との調整が難しくなります。初稿を出す日、依頼者が確認する期間、修正後の提出日を一緒に考えると、進め方を共有しやすくなります。
返信がない場合の扱いも、必要に応じて協議しておくとよいでしょう。返事がないことを制作者の判断だけで了承と受け取ると、認識の違いが残ります。確認完了の連絡方法まで決めておけば、仕事の区切りが見えやすくなります。
追加報酬は、作業に入る前に相談します
追加料金を伝えにくいと感じるときは、料金の話だけを突然切り出すのではなく、依頼内容の変化から説明すると伝わりやすくなります。
例えば、当初は一種類のチラシを制作する予定だったところ、別の店舗向けにも作成することになった場合です。店舗情報の差し替えだけで済むのか、写真や配置も変えるのかを確認し、そのうえで追加の作業量と費用を示します。
追加報酬とあわせて、納期への影響も伝えることが大切です。費用の了承があっても、完成日は当初のままだと思われている可能性があります。変更後の内容、金額、提出日について、作業を始める前に認識をそろえます。
対応を終えてから請求すると、依頼者が無料の範囲だと思っていた場合に話が難しくなります。まだ金額を決められない段階なら、まず内容を確認し、見積もりへの了承後に着手する流れを示しておくとよいでしょう。
メールやチャットにも、合意の内容を残します
打ち合わせで話がまとまっても、時間がたつと細かな条件を思い出せなくなることがあります。口頭で確認した内容は、あとからメールやチャットで整理し、相手にも確認してもらうと役立ちます。
フリーランス法の対象となる業務委託では、発注事業者には、業務内容や報酬、支払期日などの取引条件を、発注後直ちに書面またはメールなどで明示する義務があります。仕事の範囲を記録に残すことは、法律上も重視されています。
また、従業員を使用するなどの要件を満たす発注事業者が、一か月以上の業務委託をする場合には、フリーランスに責任がないのに、費用を負担せず内容を変更させたり、受領後にやり直させたりして、その利益を不当に害する行為が禁止されています。適用される義務は、当事者や委託期間によって異なります。
修正の依頼があっただけで、直ちに法律違反になるわけではありません。判断には、契約内容や変更の理由、費用負担などの確認が必要です。その際にも、最初の依頼と、その後の変更が分かる記録が役立ちます。
条件を確認することが、仕事の進めやすさにつながります
契約の確認は、問題が起きたときだけに必要なものではありません。完成するもの、修正の範囲、納品の方法、変更時の費用を共有しておけば、双方が次の作業を判断しやすくなります。
依頼を受ける前に、曖昧な点を一つずつ具体的にする。その小さな確認の積み重ねが、制作に集中できる環境と、無理なく続けられる取引関係を支えます。



コメントを送信