【久松亮一の法律ブログ】困ったとき、どの専門家に聞けば良い?
弁護士の久松亮一です。前回は「相談に行くタイミング」の話をしました。今回はそのもう一段手前、「そもそも誰に相談すればいいのか」というお話です。
いざ困りごとが起きたとき、世の中には士業と呼ばれる専門家がいくつもあって、名前は聞いたことがあるけれど中身はよく分からない、という方は多いと思います。弁護士、司法書士、行政書士、税理士。どれも法律や手続きに関わる仕事で、語感も似ているので、混ざってしまうのも無理はありません。今日は、この四つをゆるく仕分けしてみます。
まず大づかみのイメージから
細かい説明に入る前に、ざっくりした全体像をつかんでおくと分かりやすくなります。
おおまかに言うと、「誰かと揉めている・争いになっている」ときは弁護士、「役所や法務局に出す書類を整えたい」ときは司法書士や行政書士、「税金の計算や申告をしたい」ときは税理士、という分け方になります。つまり、トラブルの解決そのものを担うのか、それとも書類づくりや専門手続きを担うのか、というのが大きな分かれ目です。
この争いごとかどうかという軸を頭の片隅に置いておくと、後の話がすっと入ってきます。
弁護士──もめ事全般の窓口
弁護士は、法律トラブル全般を扱える、いわば守備範囲の広い専門家です。相手との交渉、話し合いがまとまらないときの裁判、そのどちらにも代理人として立つことができます。
具体的には、貸したお金が返ってこない、離婚や慰謝料でもめている、相続で親族と話がつかない、会社との間でトラブルになっている——こうした相手がいて、利害がぶつかっている場面が、弁護士の典型的な出番です。あなたの代わりに相手と連絡を取り、交渉し、必要なら裁判所での手続きまで一貫して引き受けられる、というのが大きな特徴になります。
逆に言うと、「とにかく相手と話をつけてほしい」「自分の代わりに矢面に立ってほしい」というニーズがあるなら、まず思い浮かべるべきは弁護士です。
司法書士──登記と、身近な書類のプロ
司法書士は、登記を中心に扱う専門家です。登記というと耳慣れないかもしれませんが、家や土地を買ったときの名義変更、相続で不動産を引き継ぐときの手続き、会社を作るときの会社の登記など、権利や組織を公式に記録する場面で活躍します。
加えて、裁判所などに出す書類の作成も担っています。さらに、一定の研修を受けて認定を受けた司法書士であれば、比較的少額の、簡易裁判所で扱われるような事件については、代理人として対応できる範囲もあります。
ですから、「不動産の名義をどうにかしたい」「相続した家の手続きを進めたい」といった話は、司法書士が頼れる入口になります。
行政書士──役所に出す書類を整える
行政書士は、役所に提出する書類づくりの専門家です。お店や事業を始めるときの各種の許認可申請、在留資格(ビザ)の申請、自動車関係の手続きなど、「お役所に何かを認めてもらうための書類」を整える場面で力を発揮します。
ここで大事なポイントがひとつあります。行政書士は書類を作る専門家であって、相手と交渉したり、争いごとの代理人として表に立ったりすることはできません。「書類を整える」ことと「揉めている相手と話をつける」ことは、法律上はっきり線引きされているのです。この違いは、後で「誰に頼むか」を考えるときの重要な手がかりになります。
税理士──税金まわりの専門家
税理士は、その名のとおり税金の専門家です。確定申告や、会社の決算・税務申告、税金についての相談や、税務署とのやり取りの代理などを担います。
「事業を始めたので申告をどうすればいいか分からない」「相続で税金がどれくらいかかるのか不安だ」といった、税にまつわる悩みは税理士の領域です。お金の話ではあっても、これは「誰かと争う」種類の問題とは別物なので、弁護士ではなく税理士が入口になります。
迷ったときの分かれ道
ここまでをふまえて、実際に迷ったときの考え方を整理しておきます。
判断の決め手になるのは、やはり「相手と争う必要があるかどうか」です。誰かと利害がぶつかっていて、交渉や裁判が絡みそうなら弁護士。純粋に書類を整えたいだけなら、その種類に応じて司法書士や行政書士。税金の話なら税理士。この順で当てはめていくと、たいていは正しい入口にたどり着きます。
もうひとつの目安は、「自分の代わりに、誰かに前に出てほしいのか」という点です。代わりに相手と渡り合ってほしいなら弁護士、自分は表に立つけれど書類の部分だけ任せたいなら他の士業、というふうに分けて考えると、ぐっと選びやすくなります。
入口を間違えても、大丈夫
最後に、安心してほしいことをひとつ。仮に相談先を間違えてしまっても、大きな問題にはなりません。
それぞれの専門家は、自分の守備範囲をきちんとわきまえています。話を聞いて「これはうちの領域ではなく、別の専門家のほうがいいですね」と感じれば、ふさわしい相手を案内してくれることが多いものです。私たち専門家どうしには横のつながりもありますから、入口を一歩間違えたくらいで行き止まりになることは、まずありません。
ですから、「どこに行けば正解なのか」を考えすぎて動けなくなるくらいなら、一番に思い浮かんだところへとりあえず聞いてみる。それで十分なのです。大切なのは、完璧な入口を選ぶことより、まず一歩踏み出してみることだと思います。
次回はぐっと身近なテーマで、「友達にお金を貸すとき、借用書っているの?」という日常の疑問を取り上げます。
士業についてさらに詳しく知りたい方向けには、こちらの記事がおすすめです!



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