弁護士・久松亮一の法律ブログ【ご挨拶】

弁護士に相談するの、まだ早いかな?問題

弁護士の久松亮一です。このブログでは、暮らしのすぐ隣にある法律の話を、できるだけ肩の力を抜いてお伝えしていこうと思っています。とはいえ第1回からいきなり込み入った制度の話を始めても大変なので、まずは入口の、そのまた手前の話から。テーマは「相談に行くタイミング」です。

最近、wantedlyという媒体でもブログを掲載しているので、ぜひこちらも読んでみてください。

久松 亮一のプロフィール

多くの人は、相談が遅すぎる

弁護士という仕事を続けていて、しみじみ感じることがあります。それは、相談に来られるタイミングが、たいていの場合もう少し早ければよかった、というものです。

来られた方のお話をうかがっていると、「実はこの話、半年前から薄々おかしいと思っていたんです」「去年のうちに一度どこかに聞いておけばよかった」という言葉が、本当によく出てきます。問題というのは、最初の小さな違和感の段階ではまだ柔らかく、いくらでも形を変えられます。ところが、放っておくほど固まっていって、気づいたときには打てる手が限られてしまう。これは法律のトラブルにかなり共通した性質です。

たとえば、お金の貸し借りでも、相手と少し連絡が取りづらくなった程度の段階なら、まだ穏やかな話し合いで片がつくことが多い。ところが、何か月も放置して相手が完全に音信不通になり、こちらの記憶もあいまいになり、関係する書類も見当たらなくなってから動こうとすると、同じ問題でも難易度がまるで変わってきます。早い遅いというのは、想像以上に結果を左右するのです。

なぜ、人は相談をためらうのか

それでも多くの方が入口の前で立ち止まってしまうのには、いくつか理由があります。

ひとつは、「こんな小さなことで相談していいのか」という遠慮です。弁護士のところに持ち込むのは、よほど深刻で、もうどうにもならなくなった話だけ——そんなイメージがあるのだと思います。だから、「まだ自分はそこまでじゃない」と判断して、扉の前で引き返してしまう。

もうひとつは、お金の不安です。相談した瞬間に高額な費用が発生するのではないか、契約させられてしまうのではないか、という心配。これも、相談を遠ざける大きな理由になっています。

そして案外多いのが、「自分が悪いのかもしれない」という後ろめたさです。揉めごとの渦中にいると、人はしばしば「これは自分のミスから始まったことだから」と抱え込んでしまう。でも、誰に非があるのかは、状況を整理してみないと分からないことのほうが多いのです。むしろ「自分が悪い」と思い込んでいたのに、話を聞いてみると全然そんなことはなかった、というのはよくあります。

相談は解決を頼む場ではなく整理する場

ここで、相談という言葉のイメージを少しほぐしておきたいと思います。

「法律相談」と聞くと、解決まで丸ごとお願いする、大きな決断の場のように感じるかもしれません。けれど実際には、もっと手前の、軽い使い方ができます。「これって、そもそも私が悪いんでしょうか」「どこに連絡すればいいのか分からないんです」「この書類、どういう意味なんでしょう」——そういう、頭の中でこんがらがったものを、いったん外に出して整理しに行く場所。それが相談です。

整理さえつけば、「なんだ、こうすればいいのか」と自分で動けることもたくさんあります。私たちのところで話して、状況を一緒に並べ替えて、「じゃあ自分でこの手順を試してみます」と言って帰っていかれる方も、珍しくありません。それで全く問題ありません。相談したからといって、必ず正式に依頼しなければならないわけではないのです。

頭の中だけで考えていると、不安はどんどん大きく膨らみます。「最悪の場合、こうなって、ああなって……」と、まだ起きてもいないことまで先回りして心配してしまう。ところが、声に出して人に説明してみると、「意外と論点はこれひとつだけだったんだ」と分かって、急に肩の荷が下りることがあります。相談には、そういう整理の効用もあります。

初めての相談は実際どう進むのか

とはいえ、行ったことのない場所はやはり不安なものです。初めての法律相談がどんなふうに進むのか、ざっくりイメージをお伝えしておきます。

まず、いきなり専門用語で詰められるようなことはありません。最初は、何にどう困っているのかを、ご自身の言葉で話していただくところから始まります。うまくまとめて話せなくても大丈夫です。むしろ、関係していそうな書類やメールのやり取りを、整理しきれていなくてもそのまま持ってきていただいたほうが、こちらも状況をつかみやすくなります。

そのうえで、考えられる選択肢と、それぞれを選んだ場合にどうなりそうか、見通しをお話しします。そこで初めて、「自分で進められそうか」「専門家に任せたほうがよさそうか」を、ご自身で判断していただく。この順番です。費用がかかる話になる場合も、何にどれくらいかかるのかを先にお伝えするのが普通ですから、知らないうちに高額の請求が来る、というものではありません。

迷っているくらいが、ちょうどいい

結局のところ、「相談すべきかどうか迷っている」という状態そのものが、相談に向いているサインなのだと思います。完全にこじれてしまえば迷う余地もありません。迷えるということは、まだ選択肢が残っているということだからです。

だからもし今、何か小さな引っかかりを抱えていて、「まだ早いかな」と感じているなら——その感覚こそ、ちょうどいいタイミングなのかもしれません。法律家を頼るのは、最後の手段である必要はないのです。むしろ、まだ何でもないうちに一度のぞきに来てもらえたら、私たちとしても、できることがぐっと増えます。

次回は、「そもそも誰に相談すればいいの?」という、もう一段手前のお話。弁護士・司法書士・行政書士・税理士、それぞれの違いをゆるく仕分けしてみます。

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